エポキシ硬化(助)剤として
エポキシ系では、塩基触媒と組み合わせた低温エポキシモノマー硬化システムに適しています。 従来の一級チオールと比較して、耐水性、組成物の安定性などの他の特性も向上させることができます。 さらに、チオールをアミン、酸無水物、フェノールなどの他の硬化剤と組み合わせて 硬化助剤として使用することができ、低温硬化性および耐久性も改善することもできます。
液安定性向上
他の1級チオールと比較してポットライフ(安定性)が向上します。
評価条件 | 5℃保管 jER828/チオール/TAP=100/70/10 jER828/変性アミン=100/80 |
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硬化系について
等量反応の場合、メルカプト基が持つ高反応性を有し、チオールの構造が寄与し柔軟な特性を示します。
一方、少量添加系では反応促進剤として従来の硬化条件の緩和や強靭性、高強度化・高Tg化等の特性を付与します。お客様のニーズにより硬化スピードや特性の調整が可能です。
Case-1:エポキシ基>>メルカプト基
・硬化温度の低減
・高熱性、高Tg化
・密着性付与Case-2:エポキシ基≒メルカプト基
・低温硬化性
・高柔軟性
Epoxy resin only
・硬化温度が高温
・高硬度&脆性
速硬化/低温硬化
アミン硬化剤よりも速い反応性を示します。
基本組成: jER828/ポリアミドアミン=100/100
PE1添加: jER828/ポリアミドアミン/PE1=100/100/35
PE1のみ: jER828/ポリアミドアミン=100/70
PE1添加効果
PE1を少量添加することによって、硬化が完了(Tgが発現)するまでの時間が短縮されます。
硬化温度を下げることもできます。
硬化条件とTg①
組成 | jER828_100部 PE1_10部 or なし 2E4MZ_2部 |
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硬化条件 | サンプルを所定温度で硬化 |
測定器 | SII EXSTAR6000 TMA/SS6100 |
測定サンプル長 | 膜厚 200μm 幅 4mm 長さ 10mm |
測定温度 | 20℃→180℃ |
昇温速度 | 5℃/min |
伸び率の変曲点温度をTgとした
PE1の添加(10部)により、未添加系よりも短時間で高いTgを発現しました。また、硬化温度100℃と130℃で同等のTgを示しました。
引張特性
PE1 添加量 | 弾性率 (MPa) | 破断強度 (MPa) | 伸び率 (%) |
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10部 (SH/エポキシ=0.14) | 2950 | 55.6 | 2.5 |
なし | 3080 | 55.1 | 2.0 |
組成 | jER828_100部 PE1_10部 or なし 2E4MZ_2部 |
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作成法 | 100℃*1hで硬化後、130℃*2hでアフターキュア |
測定器 | 島津オートグラフAGS-Xシリーズ ロードセル:1kN |
測定サンプル長 | 膜厚 200μm 幅 4mm 長さ 30mm |
測定条件 | 23℃、50% |
引張速度 | 5mm/min |
JIS_K_6911に準拠
PE1を添加(10部) した硬化物は、未添加系と同等の引張特性となりました。
エポキシ/酸無水物硬化系への少量添加
エポキシ/酸無水物硬化系にPE1を少量添加することによって、硬化条件を緩和することができます。
添加量によって、強度や柔軟性が向上します。
PE-添加量: エポキシ当量に対する比率 | 0 (blank) | 0.07当量 | 0.14当量 | ||
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A液 | Karenz MT PE1 | 0phr | 5phr | 10phr | |
酸無水物: jER YH-306 (三菱化学社製) |
60phr | 58phr | 56phr | ||
B液 | エポキシモノマー: jER-828 (三菱化学社製) |
100phr | 100phr | 100phr | |
硬化剤: PN-23 (味の素ファインテクノ製) |
3phr | 3phr | 3phr | ||
評価 結果 |
可使時間(day) | 10 | 6 | 5 | |
硬化条件 | 温度(℃) | 180 | 150 | 120 | |
時間(min) | 240 | 30 | 60 | ||
ガラス 転移温度 (Tg)(DMA法) |
温度(℃) | 87 | 85 | 103 | |
引張特性 | 弾性率(MPa) | 1800 | 1860 | 1960 | |
最大応力(MPa) | 40 | 54 | 40 | ||
伸び(%) | 2.3 | 1.9 | 3.1 |
密着性
引張・せん断試験
カレンズMT PE1硬化物は、アミン硬化物より接着強度が高くなります。
試験方法 | JIS K6850 準拠 |
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エポキシモノマー | ビスフェノールAタイプ エポキシ |
硬化剤 | カレンズMT PE1 |
1級チオール (PETMP※1) | |
変性アミン | |
促進剤 | TAP |
配合比 | エポキシ/チオール/促進剤 = 100/70/10 |
エポキシ/アミン = 100/80 |
耐水・耐溶剤性
耐水性 硬化物を98℃温水×24時間加熱浸漬 |
耐酸・耐アルカリ性 室温で硬化させ、23℃×7日間浸漬 |
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未試験 | 試験後 | 5%NaOH | 5%HCl | |
カレンズMT PE1 | 白化せず |
ほぼ変化なし |
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変性アミン | 吸水により白化・軟化 |
5%HClで重量増 |
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PETMP※1 | 吸水により白化 |
5%NaOHにより溶解 |
透明性
PE1の添加量を増やすことで、透明性が向上します。
添加量により、硬化性も大きく変わります。
PE1添加(重量部) | 0 | 5部 | 10部 | 40部 | 70部 | |
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SH基/エポキシ基 | 0.00 | 0.07 | 0.14 | 0.56 | 1.00 | |
エポキシ基が 完全に反応する温度 (硬化温度:1時間) |
180 | 150 | 150 | 100 | 100 | |
色味 | b*(0.5mm thickness) |
79 |
36 |
18 |
0.5 |
0.2 |
Tg | ℃(DMS) | 143 | 163 | 135 | 45 | 49 |
引張試験 | 弾性率(GPa) | 2.7 | 2.7 | 2.8 | 3.2 | 3.1 |
伸び(%) | 2.1 | 2.6 | 3.3 | 1.4 | 17 | |
破断強度(MPa) | 37 | 41 | 50 | 31 | 24 |
JIS_K_6911に準拠
配合組成により、高透明な硬化物もできます。
配合組成
エポキシモノマー/PE1/(左:アミン系触媒 , 右:リン系触媒)=100/70/3
硬化条件:40℃-30min
※ここに掲載されている情報は、現時点における真実かつ正確と考えられるデータに基づいて作成しております。しかしながら、(株)レゾナックは、カレンズMT使用の結果、あるいはいかなる特許の侵害に対しても責任やリスクを負うものではありません。
※1 PETMPはペンタエリトリトールテトラ(3-メルカプトプロピオナート)の略語として使用しています。